2018年6月11日
今日は最近読んだ3冊の本の紹介である。
共通しているのは、「釣り」と「狩り」がテーマだということである。
これらの本を読んでいると、遠い昔の野性の感覚が呼び起されるような気がする。
左から
①「海フライの本3 海のフライフィッシング教書」(中馬達雄著・フライの雑誌社)
②「山と河が僕の仕事場」(牧浩之著・フライの雑誌社)
③「羆撃ち(くまうち)」(久保俊治著・小学館)
①「海フライの本3」は「教書」と名のついている通りいわゆるHowTo本である。しかし、著者は40年間、毎日のように海に通い続け、メジャーとは言い難かった海のフライフィッシングを初めて新たに開拓した人で、その集大成にふさわしいこの本は、HowToの域をはるかに超えて内容が濃い。小生はフライフィッシングはど素人だが、にもかかわらず、のめり込んでしまった。
②「山と河が僕の仕事場」は、神奈川県から宮崎県高原町に移住した毛バリ(フライフィッシング用)職人が、その材料を確保するためイノシシやシカのくくり罠と銃猟の免許を取り、職業猟師に成長するノンフィクションの物語である。すでに続編の「山と河が僕の仕事場2」が出ている。
③「羆撃ち(くまうち)」は、テレビでも紹介されたことのある熊撃ち名人の半生記である。雪深い山中でヒグマと1対1で対峙する緊張感が余すところなく描かれていて、海外のどんなネイチャー・ノンフィクションにもひけを取らない迫力がある。
野性の感覚を刺激されるのは、たとえば次のような箇所。
「海の魚は、点や線で釣るものではありません。面でもなく、立体で釣るものです。フライを魚の泳層に合わせたくても、泳層は刻々と変化します。泳層の中を通すのがいいのか、ぎりぎり上を通すのか、もっと上を通すのがいいのか。
狙い通りのコースへフライを通すためには、ラインシステムとカウントダウン、キャスト距離に加えて、フライのリトリーブスピードがとても重要になってきます」
「青物とのファイト=やりとりを楽しみましょう。フッキング後に走りだした青物を止めようと思わないでください。最初に走るだけ走らせるのが青物との「やりとり」の「やり」です」
「堤防からのシイラ釣りは、活き餌も散水もティーザーも使いません。まず一匹、ルアーでもフライでも構わないので、遠くでヒットさせます。その魚を寄せてきて、わざと飛ばします。すると興奮した近郷近在のシイラが集まってきます。それをみんなで次から次へと釣って、足止めして、堤防周りに釣り堀をつくるのです」(「海フライの本3」より)
「ワイヤーをくくってある大木の横に、タテガミを逆立てて僕を威嚇するイノシシがいた。推定20㌔。大きくはないがシカと違い、差し違えるのも覚悟といった様子で僕をめがけて突っ込んでくる。
フーッフーッと激しい息を吹くイノシシににらまれながら、僕は剣鉈を握りしめた。恐怖心に打ち勝ったのは、初物を掛けた達成感だ」(「海と河が僕の仕事場」より)
「静かに藪に近づき、空を眺めて気を落ち着け、頭を空っぽにしようと努めながら、藪に入り身を沈める。緊張がピリピリッと電気のように背中と腕の皮膚を走る。まわりに注意を配り、耳を澄ませ、静かにゆっくりと這うように進む。木の陰、倒木の陰、ちょっとしたでっぱりの一つ一つに目を光らせ、注意しながら少しずつ進む。
あそこだと確信できるところがあった。視野の中に一か所だけ、ぽかっと空いているような感じのするところだ。直径二〇センチもない倒木の陰を半目にしてじっと見つめる。見えるはずなのに、まだ何も見えない。が、そこにいるという確信は揺るがない」(「羆撃ち」より)
子供のころ、鉄砲撃ちが趣味の父親の後をついて野山を歩き回ったことを思い出した。
獲物はキジバトやカモが主だったが、樹木の陰や藪に隠れながら接近し、狙い撃つまでの緊張感がたまらない。
時効だから告白するが、自分でも何回か銃を撃って鳥を落とした。
社会人になって本物のガス銃を購入し、銃の所持許可と狩猟免許を取った。
空気銃の一種でおもちゃみたいな銃だったが、口径5.5ミリ、スコープつきで、25mの射程があった。
休みの日など、近くの大学の射撃場に通って練習した。
おおむね20m以内だと、5円玉くらいの標的は外すことはなかった。
銃を手に野山を歩く快感は忘れることができない。